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酒井順子著『女も、不況?』(講談社文庫)
「お洒落出産の効果、ハゲと結婚適齢期、サルコジ婚への憧れ、お通夜不倫というスタイルから、パヒューム、探偵ナイト、梨園、桑田佳祐まで、「時代」と「女性」を鋭く穏やかに斬った、綴った、珠玉(?)のエッセイ56編。若い女性から中年男性までファンますます増殖中!」(裏表紙) 「週刊現代」の「その人、独身?」の文庫化第4弾である。題が「不況」となってるのは、連載途中にリーマンショックがあったからだそうだ。確かにあの時期、「リーマンに就職した」友人をうらやましいと思ってた人が、あっという間にまさかの倒産で「他人の不幸は蜜の味」をしめた人も多かったかも。 なかなか刺激的な題も多く、“さすが酒井氏、目の付け所が違う”と感心することしきり。実は一番受けたのは、「なぜ妻は、夫の死を願うのか?」の章。夫殺しまで行かなくとも、“早く死んでくれないかなぁ”と願ってる妻が多いという現実、らしい。とある母親の友人の話で、「夫がやっとガンになったと思ったら、抗がん剤が効いてしまって治りそうなのよ、本当に嫌になっちゃう」って言ったとか。「やっとガンになったのに」って確かにすごい!(笑) 他にも例えば、「“出張モテ”する男とは?」の章では…とある友人の話で、「私の上司って、すごく機嫌の浮き沈みがある人でさ。私なんか、機嫌の悪い時にすかさず与えるための、上司が好きなキャンディーまで用意して海外出張に行くのよ!オットセイの調教師みたいな気分よ」と。思うに、このオットセイ上司、彼女が自分に気があると勘違いしてないといいけれど(笑)。 働く女性に是非読んでもらいたいシリーズだ。「週刊現代」に連載されているということは、むしろ男性(おやじ?)向けなのかもね。次作が楽しみ。
2月8日に映画「善き人」を見に行った。 2008年 イギリス・ドイツ 原題:GOOD
「ヒトラーが独裁政権を築いた1930年代のドイツ。ベルリンの大学で学生を教えるジョン(ヴィゴ・モーテンセン)は、病に伏す母親を助け、自分の家庭では家事をこなす献身的な人間。そんなある日、自分が執筆した小説を読んだヒトラーが彼をナチス党に呼び入れることを決める。しかし、過去に戦争を戦い抜いた友人でユダヤ人のモーリス(ジェイソン・アイザックス)のことが頭をよぎり……。 ヴィゴ・モーテンセン主演のヒューマン・ドラマ。劇作家C・P・テイラーの代表作を基に、ナチス政権下のドイツで葛藤する大学教授の日々を描く。監督は、ヴィセンテ・アモリン。ジェイソン・アイザックスや、ジョディ・ウィッテカーらが脇を固める。特殊な国内情勢の中で、苦悩し続ける心優しい主人公の姿に、胸が熱くなる。」(シネマトゥデイ) 映画館の予告篇を見て見ようと思った。「イースタン・プロミス」は見損ねたので、今回は見ようと思っていた。でも、ヴィゴ・モーテンセンが「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルンだとは気づかなかった。あの映画で一番かっこよかった。また、ジェイソン・アイザックスが「ハリー・ポッター」のルシウス・マルフォイとは。この二人の人間ドラマだ。 最近のナチス絡みの作品は人間の心理とかがとても丁寧に描かれていると思う。残酷なシーンを描くのではなく、そこでの人間の葛藤が真剣に描かれていると感じる。やはり欧州ではナチスは重いテーマだし、軽く描くことは許されないのだと思う。 大学教授と言っても家庭は悲惨だ。ヒステリーな実母と家事を放棄している(育児も!)妻と、幼い子どもが二人。大学でも思ったような研究や授業ができない。深刻なストレスがあったと思う。そんな彼に美しい女生徒が近づいてきたら誘惑されてしまうだろう。それでも彼はナチスに入党する気はなかった。そこに運命のいたずらか、ヒトラーに彼の以前の著作が気に入れられてしまう。それは「役に立たない人間」を抹殺するのに好都合な論理に利用できるからというもの。彼は抵抗する力もなく、入党し親衛隊の幹部に出世してしまう。 しかし、それだけでは特に問題はないのだが、彼には昔からのユダヤ人の親友がいた。ナチスに入ることは彼を裏切ることになる。世の中がどんどんユダヤ人排斥の方向に傾いていくと、ユダヤ人の友人は彼に頼って国外に逃亡したいと懇願してくる。難しい頼みだが、彼は無理して逃がしてやろうとするが…最後に妻(元女生徒)がゲシュタポに通報していた事実を知る。そして彼は自分の罪に絶望するのだった。 あの時代にこんな「善き人」がいたのだろうか?確かに今まで隣人だったり、友人だったりした人をユダヤ人というだけで「密告」するのだから、異常な世の中だ。世の中の善悪の価値観をナチスがヒトラーが決めてしまったのが罪なのだ。「優秀な」ゲルマン民族は先頭に立たなくてはいけないので、子供を増やさなくてはいけない、つまり子供が産めない夫婦はダメなのだった。そんな価値観が蔓延する中で、「善き人」がいてほしい、という願いなのかもしれない。最後の場面は幻想なのだろうか?ちょっとわかりにくい終わり方だった。
2月1日に映画「マイウェイ 12,000キロの真実」を見た。 2011年 韓国
「第2次世界大戦末期、ノルマンディー上陸作戦後、ドイツ軍捕虜の中に1人の東洋人が発見される。話す言葉もわからない中、連合軍の尋問を受けた彼が語り始めたのは、にわかに信じ難い物語だった。1928年、日本統治下の朝鮮。そこには、頑なに国を信じた辰雄(オダギリジョー)と、ひたむきに夢を信じたキム・ジュンシク(チャン・ドンゴン)がいた。 アジアからノルマンディーまでを生き抜いた東洋人の壮絶な人生と人間の本質を描くトゥルーストーリー。監督は、『ブラザーフッド』のカン・ジェギュ。オダギリジョーとチャン・ドンゴンが、運命のいたずらで日本、ソ連、ドイツの軍服を着て戦うことになる男たちを演じる。240日間にも及ぶアジアからヨーロッパの大陸横断撮影を敢行して作られた、壮大なスケールの作品世界に酔いしれたい。」(シネマトゥデイ) いくらチャン・ドンゴンがかっこよくても“お正月からこんな暗い映画は無理”、と思っていたれど、1月に見た「徹子の部屋」のチャン・ドンゴンを見て“やっぱり見よう”と思った。 とにかくすごい映画だった。今の日本ではこんな大規模な映画は撮れないのではないかと思うほど、スケールの大きい作品だ。戦争場面がすごい。 1枚の写真からできた話らしい。歴史的に有名なノルマンディー上陸作戦で捕虜となったドイツ兵の中に東洋人が一人いて、彼は日本・中国・ロシアから国境を越えてノルマンディーにやってきたという事実。詳細はわかってないみたいだけれど、その「事実」から物語が作られた。 「ブラザーフット」も心に残る作品だったけれど、あまりに残酷な場面は直視できなかった。今回もちょっと不安だったけれど、今回はしっかりと全部見れた。 “なんでオダギリジョー?”って思ってたけれど、彼って韓国で人気があるようだ。この前韓国ドラマ見てたら、ヒロインがオダギリジョーの名前を出していたので驚いた。“彼って韓国で有名なのね。”中国映画にも韓国映画にもすでに出演してるようだ。 いろいろ心に残る場面があるけれど、一番印象的なのはノルマンディーで海岸を走るジュンシクを見つけた辰雄の表情。異国で孤独な捕虜生活を送っていた彼に生死を共にした「友」が現われた瞬間なのだから。 オープニングとエンディングに登場するロンドンオリンピックで走る後姿にはジュンシクの名前が。“あの後姿はチャン・ドンゴンではない”と思ったけれど、その答えは物語の最後のクライマックスに明らかにされる。 戦争の話なので男の物語だ。その中に紅一点のファン・ビンビンが(正確にはジュンシクの妹も登場するけれど)。出番は短いけれど、美しいスナイパー役で印象的。日本人を恨む中国人が多いわけだ(朝鮮半島の人もそうだけれど)。 “どうやって撮影したんだろう”と思うほど戦闘シーンはすごい。特にシベリアの場面は寒そう!約8ヶ月の撮影は大変だっただろうなぁ。主役の二人の迫真の演技に拍手!
1月25日に映画「運命の子」を見に行った。 英題:SACRIFICE 2010年 中国
「中国・春秋時代、晋の国。敵対する武官・屠岸賈(ワン・シュエチー)の謀略により、皆殺しにされてしまった趙氏一族。そんな中、一族の子として生まれたばかりの男児が、出産に立ち会った医師・程嬰(グォ・ヨウ)に預けられる。男児を守ろうとすることで自分の子や妻を殺されてしまった程嬰は、ひそかに屠岸賈への復讐(ふくしゅう)を誓う。 チェン・カイコー監督が、司馬遷の「史記」に記され、2,600年もの間語り継がれてきた物語「趙氏孤児」を映画化した感動の歴史ロマン。謀略により滅亡させられた一族の子をめぐり、苦悩と葛藤(かっとう)が入り乱れる愛憎劇が展開する。一族の遺児を引き取る主人公の医師に、グォ・ヨウ。命と愛をテーマにした、チェン・カイコー監督ならではの作品世界が堪能できる。」(シネマトゥデイ) ↓の「ミラノ、愛に生きる」もこの「運命の子」もBunkamuraのル・シネマで上映されたもの。 経済大国中国が映画産業に力を入れている。その中で作られた本作は「孔子の教え」同様、大スペクタクルだ。映画館で予告篇を見たとき、“映像がきれい!”と思って映画を見ることにした(実際見ると、きれいな映像は予告篇がすべてだったけれど/汗)。 司馬遷の「趙氏孤児」の物語をはじめて知った。昔の物語なので、いろんな解釈があるらしい。この映画のストーリーはよかった。なぜ趙氏孤児が生き残ったのか?そのあたりの物語の展開がハラハラドキドキ。そのあとの気の遠くなるような復讐劇。二人の「父」に育てられた趙氏孤児。その3人の物語がまたハラハラドキドキ。子役の3人(ハイハイしてた赤ちゃんも入れて)がよかった。もちろん、二人の父もよかったけれど。妻子を無残に殺された相手に復讐のためだけに15年間も仕えるというのは並大抵の根性ではない。その父親の心情を思うと最後の幻想の場面には涙する。 あくまでも男の物語なんだけれど、最初に登場する荘姫が美しい。ファン・ビンビン(荘姫)とホワン・シャオミン(韓厥)の美しさは物語に華を添えている。 「運命の子」とは誰のことなのか。もちろん趙氏孤児のことなんだろう。でも、程嬰が自分の子供が生まれたとき、「この子は今生まれる必然があって生まれた」というようなことを言ってる。また、「この子は死ぬために生まれてきた」とも言ってる(なんて悲しい言葉だろう)。「運命の子」とは、同じ日に生まれた悲しい運命の二人の子どもを指しているのでは、と思った。
1月18日に今年最初の映画「ミラノ、愛に生きる」を見に行った。 2009年 イタリア
原題:IO SONO L'AMORE 「ロシア人のエンマ(ティルダ・スウィントン)は、富豪のタンクレディ(ピッポ・デルボーノ)と結婚し、イタリアのミラノに渡る。彼女は晴れて上流社会の一員となり、3人の子どもたちにも恵まれ誰もがうらやむ生活を過ごしていた。ある晩、家長である義父(ガブリエル・フェルゼッティ)の誕生日の夕食会が催され、ついに後継者が指名される。 イギリスの演技派女優、ティルダ・スウィントンが上流階級のマダムを熱演する女性賛歌。ミラノの裕福な家庭で妻、そして母として長年自分を押し殺して生きてきた女性が愛を知り、生きる喜びを取り戻していく過程を描く。イタリアの往年の名優ガブリエル・フェルゼッティが義父を好演。しゃれたな邸宅の優美さや上品で洗練された衣装の数々と共に、次第に美しさを増す主人公の姿に心奪われる。」(シネマトゥデイ) お正月映画というのは忙しくて、ついつい見逃してしまうものだけれど、この映画は見ることにした。映像が美しいというので。宣伝文句は「巨匠ヴィスコンティを彷彿とさせる華麗な映像美」とある(帰りのエレベーターでご一緒だったご婦人たちは「ヴィスコンティの映像美と言われてもそれがわからない」と言ってたけれど/汗)。わたしとしては映画「副王家の~」のほうが上だった。 音楽は「オペラのようなジョン・アダムスの音楽」と絶賛されているけれど、映像が静謐なのに、少し違和感を感じた。つまりちょっとおおげさに思った。熱情を表す場面でもあそこまで仰々しい音にしなくても…と思ったのは日本人だから? この映画は主役のティルダ・スウィントンのためのものだ。彼女と監督が創り上げたものらしいし。彼女は正統派の美人ではないけれど、雰囲気のある女優さんだ。スタイルがいい。彼女の着ている衣装も話題だけれど、上流階級の雰囲気がよく出ている。 いくつか疑問に思ったこと。料理に陶酔することもあるかもしれない。でもその料理を作った若いシェフに心を奪われるだろうか?自分の子供を身ごもってる愛する妻がいるのに、絶望した息子は母親に救いを求めるのだろうか?イタリア男性はマザコンって聞いたけれど、そこまで?!それに情事の現場を目撃したわけでもないのに、スープのレシピを伝授しただけで情事を確証して激怒する?自分の母親と自分の友人という普通じゃない組み合わせで。愛する息子を事故死で失った直後に、若い愛人に走る?息子を失った絶望感からそんなにすぐに新しい行動に移せるだろうか? ミラノのドゥオーモの上まで上れるんや、とか、二人の息子はイケメンや、とか、物語の大筋と関係ないところで感心したけれど、全体的にはちょっと馴染めない物語だった。娘の同性愛もあまりいらない要素だった気もするし。最初に書いたエレベーターでいっしょだったご婦人は「普通でいいと思ったわ」との感想をもらしていた。たしかに…。
あさのあつこ著『おいち不思議がたり』(PHP文芸文庫)
「おいちは16歳。江戸深川の菖蒲長屋で、医者である父の仕事を手伝っている。おいちが他の娘と違うのは、この世に思いを残して死んだ人の姿が見えること。そんなおいちの夢に、必死で助けを求める女が現れる。悩みながらも己の力で人生を切り拓き、医者を目指す娘が、自分に宿った不思議な力を生かし、複雑にからみ合う因縁の糸を解きほぐしていく、青春「時代」ミステリー。」(裏表紙) 最近時代ものが増えてきたあさのあつこ氏。これもそのシリーズ。(シリーズになると信じているんだけれど、違う?) 解説の小手鞠るいさんがいうように、青春小説であり、ミステリー小説であり、時代小説でもあるという「おいしい」話なのです。おいちさんと新吉さんの今後も気になるし。 人に見えないものが見えるというのは、時々ある設定だけれど、これが謎解きのきっかけになる。すべてを見せるのではなくて、ちょっと見せるあたりの演出がいい。それにしても、直介さんが哀れ。この先不幸を乗り越えられずに一人で静かに生きていくんだろうか、まだ若いのに。時の流れによって解決してほしいものだ(とつい感情移入してしまった/汗)。ぜひシリーズ化してくださいね。
昨年最後の映画は12月14日に見た「孔子の教え」だった。 2009年 中国
「中都宰に任命されてわずか1年で自らの才をいかんなく発揮した孔子(チョウ・ユンファ)は、安定した国を築こうとする魯の君主・定公(ヤオ・ルー)から大司寇の位を授けられる。孔子の活躍により魯が強国と化していく中、魯を脅威と感じた隣国・斉は、友好条約を結ぶという名目で定公の捕獲と孔子の暗殺を企てていた……。 諸侯国が覇権を取ろうと戦いを繰り広げる紀元前6世紀を舞台に、「論語」で知られる孔子の生きざまを描く歴史大作。監督は、フー・メイ。チョウ・ユンファが孔子を演じる。共演はジョウ・シュン。中国の歴史上高名な人物の一人である孔子を中心とした壮大な世界観に注目だ。」(シネマトゥデイ) 中国政府が国策として映画産業を援助し、孔子の映画を作っているとテレビで見てから“いつ日本にくるんだろう”と思っていた。そして昨年末やっと日本で上映された。そのときも孔子役がチョウ・ユンファと聞いて違和感があった。映画を見ててもちょっと違和感があったけれど、あとで孔子は長身でたくましい人だと知った。孔子の出身の部族は巨人族らしい。じゃぁ、チョウ・ユンファはぴったりかも。とっても存在感のある役者さんだ。孔子は73歳まで生きている。 斉との峡谷会談の場面は圧巻だった。実際あんなところで会談したとは思わないけれど迫力があった。衛国の南子(ジョウ・シュン)との場面も印象的だった。彼女は「小さな中国のお針子」のときは可憐な少女だったけれど、今や中国四大美人女優の一人らしい。 魯の宮廷の場面を見たとき驚いた。“「精霊の守り人」の場面とそっくり!” あのアニメを見たとき、“中国の宮廷みたい”って思ったけれど、今回あまりに似てるので驚いた。ただこんなこと思いながら見てる人って、わたしくらいだろうと思ったけれど(笑)。 何と言っても一番印象的だったのは、顔回(レン・チュアン)が池で凍死するところ。一番のイケメンと思っていた彼があっけなく死んでしまって残念。「タイタニック」を思い出させる悲しい場面だった。 考えてみたら、孔子の名前も『論語』も日本人には親しみのあるものだけれど、実際の孔子についてはあまり知られていないのではないか。孔子が中国映画になるのは今回はじめてだとか。なんか政治家に見てもらいたい気がする。
昨年12月7日に映画「サルトルとボーヴォワール 哲学と愛」を観に行った。
英題: LES AMANTS DU FLORE 2006年 フランス 「1929年、ソルボンヌ大学で出会ったジャン=ポール・サルトル(ロラン・ドイチェ)とシモーヌ・ド・ボーヴォワール(アナ・ムグラリス)は、互いに惹かれ合い、卒業後に共同生活を始める。しかしサルトルは互いに愛し合いながらも、ほかの相手との関係も認め合うという自由恋愛を提案。女性にとって結婚か独身しか選べない社会に懐疑的だったボーヴォワールは、戸惑いつつもその提案を受け入れるが……。 「実存主義」を広め、世界中の若者に多大な影響を与えた哲学者ジャン=ポール・サルトルと、女性の幸せのため社会通念や偏見に立ち向かった「第二の性」の著者シモーヌ・ド・ボーヴォワールの知られざる愛の軌跡を描いたドラマ。理想のカップルと称され公私にわたり影響を与え合いながらも、常識を覆す愛の形に苦悩しながらも、時代の寵児となった二人の半生に秘められたし烈な愛憎劇に圧倒される。」(シネマトゥデイ) まず映画を見終わったとき一番に思ったことは、やはり「嫉妬」からは逃れられないということだった。「契約結婚」というのは、男サルトルの勝手な言い分であって、二人の関係は「ビジネスパートナー」以上のものではなかったと思う。自分が信頼している異性が他の人と関係を持ったら、普通の人間は嫉妬するわけで、哲学者も例外ではない。ボーヴォワールにネルソン・オルグレンという恋人ができて、パリまで追いかけてきたとき、サルトルはどう思ったか。彼女がアメリカに行くのに反対したのは、単にビジネスパートナーに去られては困ることだけだったのか。勝手な男の本性を見る思いだった。 原題は「フロールの恋人」。フロールとはもちろんサン・ジェルマン・デ・プレのカフェ・ド・フロール。近くのカフェ・ドゥ・マゴと共に二人が通ったことで有名なカフェだ。実はわたしもパリに行ったとき、わざわざこの二つのカフェを訪れて写真まで撮ってきた。とってもパリらしいカフェだ。 ボーヴォワール役のアナ・ムグラリスが美しい。知的で芯の強いボーヴォワールをよく表現してると思う。昔、サルトルとボーヴォワールに漠然とした憧れがあったけれど、この映画を見て二人の印象がずいぶん変わった。哲学者も人間だということだ。
昨年12月3日に「AMADEUS(アマデウス)」をシアターBRAVA!で観た。
「波瀾万丈の生涯を送り、謎多き死を遂げた天才作曲家モーツァルト。本作では、彼の死を当時の宮廷楽長サリエーリによる暗殺説を軸に展開。音楽家として地位と名声を得ながらも、モーツァルトの天才性に対する嫉妬と羨望の感情に苦悩するサリエーリの視点から物語が紡がれる。 今回、7年ぶりに幸四郎がサリエーリ役に挑戦。04年公演に続き幸四郎が演出も手掛ける。そのほか共演者に、モーツァルト役に武田真治、その妻コンスタンツェ役に内山理名を迎えて送る。」(ネットより) 昨年はよくお芝居を観に行った。3月24日に新神戸オリエンタル劇場での「音楽劇 探偵~哀しきチェイサー」、8月25日にシアターBRAVA!で「冒険絵本 PINOCCHIO-ピノキオ-」、シアター・ドラマシティで「有毒少年」、そして今回の「アマデウス」。やっぱり「アマデウス」は圧巻だった。 何よりも松本幸四郎さんが出ずっぱり!それにあのセリフの多さ!本人はセリフの多さより「間」が難しいって言っておられるけれど、あのお歳であれだけの記憶力はすばらしい。主演のみならず演出もされているとか。本当に感服した。 モーツァルトに武田真治、コンスタンツェに内山理名というのは、今回初の配役とか。ずいぶん若返った配役になったわけだ。二人ともはつらつとしていてよかった。 「男の嫉妬」が大きなテーマらしい。当時モーツァルトの才能に気づいていたのはサリエーリだけだったという皮肉。モーツァルトを「殺す」ことで歴史に名を残したサリエーリ。その苦悩を演じる幸四郎さんはやっぱりすばらしい。
森絵都著『架空の球を追う』(文春文庫)
「何気ない言葉に傷ついたり、理想と現実のギャップに嫌気がさしたり、いきなり頭をもたげてくる過剰な自意識にとまどったり…。生きているかぎり面倒は起こるのだけれど、それも案外わるくないと思える瞬間がある。ふとした光景から“静かな苦笑いのひととき”を抽出した、読むとちょっと元気になる小説集。」(裏表紙) 1ヶ月以上前に読んだ本なので、内容をすぐに思い出せない。けれど、心温まる本だったと記憶してる。短篇集。 表題の「架空の球を追う」は、少年野球の練習の様子なんだけれど、それを見ている母親たちがいい。今は野球をしてる息子に夢を託しているけれど、結局は息子の「選択」を「許しちゃうんだろうな」とおしゃべりしてる。どこにでもある風景かも。 「銀座か、あるいは新宿か」は、イマドキの「女子会」を彷彿とさせる。どうでもいいことをぐだぐだいつまでもおしゃべりしてる。 「チェリーブロッサム」も「ハチの巣退治」も「ありそうな…」話だ。実際に当たり屋の老人を見たことあるし。「パパイヤと五家宝」の五家宝という和菓子が想像できなかった。最後のオチ(?)の牛脂はおかしかったけれど。 一番印象深かったのは「二人姉妹」。姉の結婚話が壊れた理由を妹は知らない。それはとっても残酷な婚約者からの一言だった。彼に罪の意識は全くない。見た目も性格も全く似てない姉妹。でも、そんな二人を昔ながらの姉妹に戻したのは「UFO騒動」だった。やっぱり姉妹なんだ、と安心した結末だった。 「ドバイ@建設中」もよかったけれど、あんな結末になるだろうか?ちょっとファンタスティックなお話でした。いろんなお話がそれぞれに面白かった一冊でした。
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